最高裁判所第三小法廷 昭和62年(オ)442号 判決 1988年12月20日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人石田省三郎、同近藤彰子の上告理由第一点について
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、本件解雇が労働基準法三条に違反するものではなく、また解雇権の濫用にも当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。所論憲法一九条違反の主張は、最高裁昭和四三年(オ)第九三二号同四八年一二月一二日大法廷判決(民集二七巻一一号一五三六頁)の趣旨に徴し、失当というべきである。論旨は、採用することができない。
同第二点について
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、被上告人が「組合員に対する処分はすべてその処分の正当なる理由を組合が認めない限り行わない」旨定める本件労働協約についてした解約の申入れが権利の濫用に当たるとはいえず、右労働協約は右解約の申入れにより昭和四八年三月三一日限り効力を失つたものであるとし、また、右解雇等同意条項が労働協約の終了により失効した後も右条項に定められたところが個別の労働契約の内容として存続すると解する余地はないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 貞家克己 裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡滿彦 裁判官 坂上寿夫)